August 2011

心優しき伝説の人。

心やさしき伝説の人


■伝統と伝説に彩られた一族第二弾、3000形SE車に続いて登場したロマンスカー、3100形NSE姉さんです。
SE車の登場以来週末のロマンスカーは連日大盛況を博し、「切符が取れない」という苦情まで出るほど。そんな中ロマンスカーの増発とさらなる魅力をプラスするべく登場したのがNSE姉さんでした。
SE姉さんに続いて新宿~小田原1時間を目標とし、SE姉さんがが採用した軽量・低重心構造を踏襲する一方で、名鉄7000系パノラマカーで国内初登場した2階運転席、1階展望席のスタイルを採用し、現在に至るまで続く展望特急ロマンスカーの伝統に花を咲かせました。
長らく第一線で活躍の後、30000形EXE車に業務を托して99年にオリジナル車が引退、翌2000年にイベント車「ゆめ70」となった最後の1編成が引退しました。現在編成を短縮した1本が喜多見検車区に、先頭車1両が開成駅前に保存されています。
他の編成は、緑の連界鉄道に居るとかいないとか……(ry

■優美な流線形と優しげな顔立ちから他の車両たちを温かく見守るお姉さんキャラを想像しています。
NSE姉さんまでは高速化を追い求められるだけの余裕はまだあったようですが、この後は通勤主体・大量輸送時代へと移行し、次のロマンスカーとなるLSE車7000形まで軽量低重心構造が受け継がれることはありませんでした。
ただし、連接構造はVSE車まで続く伝統として継承。SE姉さんの伝統はまだ生きています。

■SE姉さんは生まれると同時に引退だったので会ったことは全くなかったのですが、NSE姉さんはおぼろげながら江ノ島線内ですれ違った記憶が残っています。
当時すでに引退秒読みで、さよなら装飾をまとって最後の力走を見せていた頃。
小さかったのではっきりした記憶はなかったりします・・・^^;

■前回お話した「小田急バーチャル鉄道博物館」の走行動画では祖師谷大蔵付近を快走する姉さんの姿が収録されています。日中のこの区間、急行線をゆく優等列車はみな最高速で飛ばして行きます。
ご本人の現役時代、わずかな期間ながら喜多見~和泉多摩川の複々線化は完了しており、wikipediaにも現在の梅ヶ丘のような喜多見駅の緩急分岐をゆく姿が掲載されています。
ということで複々線化後のすっきりした高架区間を行く姿は全くありえなかったわけではないようですが、それでも、複々線の効力をそれなりに発揮できるようになった現状を姉さんは見ることなく引退してしまっています。走行動画の中で祖師谷大蔵付近をかっとばす姉さんは何処か楽しそう。

やはり違和感無く溶け込む姉さんの姿をご覧あれっ

伝統の先端に立つ人。

SE姉さん

■他では見られない連接構造、かつての喫茶室。小田急ロマンスカーは文字通りの看板列車にして、伝統と伝説に彩られた一族です。その中でも現在のスタイルを確立した形式の一人、3000形SE車・SSE車姉さんを描きました。
軽量・低重心構造に曲線区間でも高速運転できるよう連接構造を採用するなどそれまでとは全く違う斬新な姿で登場し、当時の狭軌(線路幅が欧米標準1435mmより狭い幅のこと)部門の速度世界新記録145km/hを東海道線でのテスト走行で達成。
また、それらの優秀さから鉄道友の会「ブルーリボン賞」を初めて贈られるなどの伝説を残しました。
のちに御殿場線直通列車「あさぎり」を担当するべく8両から5両へ短縮され、20000形RSE車と371系にあさぎり運用を托すまで活躍しました。

■顔立ちはモダンでどこか優しげ。当時はかなり未来的な車両だったのではと思います。
そして、高速化を追い求めたその姿からちょっとスピード狂で、でも暖かい。そんな人を想像しています。
彼女の登場当時に掲げられていた新宿~箱根間60分運転は3100形NSE車でも意識されましたが、その後は沿線人口の増加からスピードアップどころでなく通勤輸送主体へと変化。60分の目標は今でも達成できぬままでいます。きっと後年は満足にスピードを出せない状況がやや不満だったんじゃないかな・・・w

■ちなみに、いつかここでお話しした『人に広く印象付けるCMソング』作者三木鶏郎氏の記事で紹介した「小田急ピポーの電車」のピポーの電車はSE姉さん自身、そして歌詞の中の「ピポー」とは、SE姉さんから初採用され、当時鳴らしっぱなしで走っていたという補助警笛を指しています。

SE姉さん立ち絵
■小田急が持つ唯一の鉄道博物館「小田急バーチャル鉄道博物館」というサイトがあります。
「車両展示室」コーナーで現役車・引退車の一部が精巧なCGで眺められる他、現役車は開業当時の、引退車は逆に現在の風景を走行する動画が用意され、SE姉さんは複々線となった現在の狛江付近を走行して行く姿が用意されています。
姉さんが引退した頃の狛江付近はもちろん地上複線時代、しかもSSE車となっているのでこの動画は本来あり得ない動画なのですが、違和感はまったくなく、それどころか本当に走ってきてもおかしくないくらい自然に溶け込んでいます。

つまり、姉さんが築いた伝統が今でもしっかり生きている証なんじゃないかなと思うんです。
塗装もほぼ受け継がれているし、違和感無いのも当然かもしれないのですが、今の風景に混ぜても自然に溶け込むということは、姉さんの築いた伝統が今も変わらず受け継がれてるからなのではないかなーと。

現役組の走る姿と重ねながら展示室の走行動画を見ると、姉さんに始まり今に生きる伝統が垣間見れるはずです。
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